ちいさく、微笑む/秋葉竹
 



ちいさく囁くのは、
この街に染められた心が勝手に、
懸命に悲鳴を我慢して漏れた
生き残るための
こころの絶叫のひとひらの花びら。

樹氷のビルの屋上に立ち、
過去の私のまぼろしが、
あたたかな眼差しで、私をみる。

私の眼は、雪の結晶を追うだけで、
視線がからむことはない。

この冬を越した
雪のピエロの叛逆たましいは、
歩道橋階段下の
ティシュー配りに疲れてしまった。

極楽浄土は西の空、彼方、
曲がりくねった灰色の低い雲の下。
子守歌を聴く安らかなベッドのうえで、
鏡に映る固まった微笑みが流す涙の色は、
誰の思い出も落ちてはいない
[次のページ]
戻る   Point(2)