ちいさく、微笑む/秋葉竹
ちいさく囁くのは、
この街に染められた心が勝手に、
懸命に悲鳴を我慢して漏れた
生き残るための
こころの絶叫のひとひらの花びら。
樹氷のビルの屋上に立ち、
過去の私のまぼろしが、
あたたかな眼差しで、私をみる。
私の眼は、雪の結晶を追うだけで、
視線がからむことはない。
この冬を越した
雪のピエロの叛逆たましいは、
歩道橋階段下の
ティシュー配りに疲れてしまった。
極楽浄土は西の空、彼方、
曲がりくねった灰色の低い雲の下。
子守歌を聴く安らかなベッドのうえで、
鏡に映る固まった微笑みが流す涙の色は、
誰の思い出も落ちてはいない
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