獏、仕事する/草野大悟2
 
、なにすんのよ! ヘンタイ? 
わたしも大声で叫びながら思いっきり男の頬にビンタを見舞った。
その拍子に、今度はその男が橋から落ちそうになった。
な、なにすんだ? 
男は顔を引き攣らせて怒鳴った。
き、きみの悪夢を食べてやったのに!
は? 悪夢を食べた? は?
男がひどい勘違いをしているらしいことが、わたしにもはっきりと分かった。
わたし、自殺なんかしませんから?
男の目を睨み付けて、きっぱりと言った。
この時、わたしは初めて男をまともに見た。

熊のような体、長い鼻、虎の足、牛の尾っぽ。
──  獏がいた。

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