瓶の底/アンテ
 
け探してももうなかった
顔を近づけてみると
ひゅうるる
音が聞こえた
瓶の底にだれかが座っていて
不思議そうに
こちらを見上げていた
唇がほほえんで
なにかを言った
伝えなければならないことが
あるはずなのに
思い出せなくて
目をそらすと天井の模様が視界を流れた
ひゅうるる
音が聞こえた
ふり返ると
ガラスの瓶が縁側に並んでいて
どれもみな
空っぽの口を開いていた
棒でそっとたたくと
ひとつずつ
ちがう音がした
とてもいい音がした



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