夜が明け、朝は来るから。(黒猫の黒い影)/秋葉竹
 

仲の良い紋白蝶を追う昼下り、
美しいクラリネットの音が奏でられる街で、
裸足で古びた石畳を駆けている
あなたに気づいてもらうこと。

そこで、あなたは、立ち止まり、
おそろしいほど優しい笑顔を浮かべ、
幼い少女の声で、私に問いかける。

まだ、夢から、覚めないの?

そんな、心を置き去りにした
早い春のその場ごまかしの白い朝の症状。

わずかに病んだ寂しい欲望が、
貧血による目眩を起こし、
もう、座り込むしかない。

そして、
来ないかもしれなかった
ため息まじりの朝は、
案外平気な顔でやって来て、
私の暖かく平和なベッドを奪い、
座り込んだ私と黒猫をさっそく、
祝福のドアを閉める勢いで蹴り上げて、
今日1日の青空の下での生活に、
その心を、染め上げてしまおうと
猫なで声で、実は残酷な要求をするのだった。

容赦ない、なにをも認めない疾風吹き荒ぶ中、
忘れられない無邪気な私の夢をことさら、
蝶の化石や、凍った道扱いするのは、
お願いですから、やめてくださいね?

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