桜の樹の下では/佐々宝砂
 
そのみえすぎる目で満開の桜の花の下をみて
ひとがみてはいけないものさえみたくせに

あなたったら全然気づかないんだから鈍感でもう
待ちくたびれてあたしとっくに腐っちゃったのよでも
きらきらと光る筋をひいてなめくじが愛撫してくれるし
とろとろと透きとおる屍蝋がきれいでしょうほら

あたしたちの愛の巣をつつむ桜の毛根は
あたしたちをねっとりとりまく腐汁を吸いあげる
そうしてあたしたちは桜になるのだわ
これは信じていいことなのよ

桜の花はいついつまでも満開であたしはその下で
あなたと腐ってゆくの二匹のみみずみたいにからみあって
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