ガラケー/山人
 
半覚醒状態で掛布団の下でうずくまる
地球外生命体の逃亡者のような私は
テレビの声だけ聴きながら丸く横たわっている
いっとき、毒水は体を掛けめぐり
麻薬のように高揚したかと思ったが
今は、毒々しい血液を運ぶために
鼓動はうるさく高鳴っている

きっと生まれた星は何処かにあって
こんな 
夜の雨が似合う天体なんかじゃなかったはずだと
うっすらと眼を開けてみる

はるか何光年の前に
たしかにルーツがあって
それが光となって到達し
芽吹いた命
旅を重ねていたころの記憶はないが
たしかにどこかの宇宙から来たのだ

記号のような名をずっとつけられて
こんなに加齢した体を押し付けられて
夜の雨音を聞いている

妻のような人が
部屋の電灯を消した
ずっとよその星の人と
思っていたに違いないのに

黒くくすんだ布団の中で
携帯のふたを開けて
遠い星からの
伝達がなかっただろうかと
やはりうるさく響く夜の雨音を聞いていた
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