霖雨の終わりで/flygande
工場の
金属板を打つ音が空に響き
僕はシートに深く座って
窓の外を見ている
電車は出発時刻を静かに待ち
構内のスピーカーの
沈黙が雨の音に聞こえる
涙は
いつも遠くから
そして人知れず湧く泉のように
秘密の水脈を辿り
十二人の幻は
どうしてか一人多いみたいで
そこに自分の姿が含まれていることに
気付いたのはずっと後になってからだった
ふもとへ向かって流れていく丘の枝桜
そんな映像も
もうとても擦り切れたものになったけれど
幸福の奥に
隠された悲しみが暴かれたとき
暴かれた悲しみのほうが真実に思えた
そのずっとずっと奥で
幸福の魚たちが
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