旅路/忍野水香
長い旅路を振り返れば
故郷へ続く道は遥か遠く
懐かしい人たちの声も
今はもう 聞こえない
ポケットに詰め込んだ思い出は
知らず知らずのうちに零れ落ち
いつの間にか 失くしてしまった
忘れたい思い出
忘れられない思い出
思い出とは良くも悪くも
人の心を波立たせ
懐かしくもあるけれど
時に残酷であり
途絶えることのない記憶の輪廻は
忘れかけていた胸の痛みを甦らせる
過去という海原に漂う思い出の欠片は
穏やかな漣のように
或は嵐のように大きな波となって
心の岸辺に打ち寄せる
私はそれを拾い集め
白い花束を添えて弔いましょう
風に乗せ
空と海が溶け合う彼方にあるという
ニライカナイへと
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