九龍の/らいみ
 
スイカの種のように黒光る虫
ヨックモックの空き缶の中
パンくずの社会
掃きだめの市場

ちょびひげのターコちゃんのおじさんは
九龍虫の日常に指をつっこみ
いくつかの虫をつまんで 口に放り込む
ぼりぼりぼり
いくつもの虫の命がおじさんに捧げられ
元気 頬のつや 活力 などに変換されていった
虫を支配する 豪快な笑い
九龍城の混沌にも似合っていた
遠い昔の記憶

ひょんなことから 九龍虫の正式名を知った
キュウリュウゴミムシダマシ
おじさんはだまされていたのだろうか
今もだまされ続け 長生きしているのだろうか
そうだといいな
だって世界は整備されすぎてきていて
おじさんの生きる場所は狭まっている
それを乗り切るには 九龍虫のエキスが必要だろう

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