薄力粉とスティックシュガー/Seia
いつもなら
通らない道を辿って
いつも通る道へ合流する途中
知らないわけではないのに
ハンドルを握る手がすこし浮く
最後に確認した景色との差異
正解のない間違い探し
見つけたとしても
ただ単純に
忘れていただけかもしれないもの
交差点を過ぎたあたり
おそらくもうずいぶん前に閉店してしまったはずの
軒先を借りて雨宿りをしていた記憶が
目の前に転がってくる
誰を待っていたのか
誰を待っていなかったのかも
定かではない
足元を濡らしていく雨粒を見つめながら
年齢さえもわからない
いつかのわたしを
覚えているひとはいるのだろうか
運転席から見た反対車線の奥に
[次のページ]
戻る 編 削 Point(1)