ピンナップロックスター/大覚アキラ
 
壁に貼られた黄ばんだポスターの中で
彼は永遠に身悶えしている
20年以上も前に
この世を去ったロックスター

天才的というよりも
悪魔的なテクニックの持ち主でありながら
彼の中には
彼のテクニックでさえ
表現しきれない何かがあるかのように
いつも
もどかしげに
イライラしながら
ギターを掻き毟るように弾く
その仕草は
まるで
何かがバラバラにぶっ壊れる寸前の
綻びそのもののようで
そのポスターを見つめていると
眼の奥にドライアイスが紛れ込んだみたいで
それなのに硝子体が沸騰しているみたいで

ポスターの中で
永遠に固定されたその瞬間に
彼は在り続ける
いつの日か
紫外線を浴び続けたポスターが褪色して
ただの黄ばんだ薄汚い紙切れに成り果てても
彼は永遠のロックスターだ
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