夜と言葉/木立 悟
積み重なった埃が
本を燃すことなく
本のまわりに燃えてゆく
背表紙と虫殻を照らしながら
奥に詰められた本に影は無く
どこまでも立ち並ぶ棚だけが
爆ぜる炎に揺すられつづけ
床に焦茶の波を寄せる
皮のにおい
窓の外の緑色灯
本の洞は深く高く
奥へ奥へとつづくばかり
鏡の手のひら
行方知れない光源から
白い線が描く冷たい輪
歪み 震え 降りて来る
風がひたすら来ては過ぎ
風はひたすら剥ぎ取ってゆく
二重の輪から
したたる水
風の錆や
水の錆
身体じゅうの窪みに
降り積もる口笛
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