皆既月食の夜/坂本瞳子
 
赤黒く
異様な影を放ち
その物体は
冷たい闇に浮かぶ

それを映すこの目は
血を流すのではないかと
どんな幻想を見ることも
できるのではないかと
思えるほどの不気味さに
心を奪われて寒空の下
固唾を呑んで佇む

そして感じる
大地の動きを
微々たることのない
地底の奥底深くの
エネルギーさえも

力を吸収するがごとく
呼吸を合わせよう
核から放たれる
鼓動とともに
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