浮遊する椅子/Seia
 
あなたはいわゆる超能力者なのですか?
と聞かれました。
わたしはそれにうまく答えることができませんでした。
やわらかい否定も不確かな肯定もしたところで、
ただの時間稼ぎにしかならないと思っていました。
証人喚問のような空気に耐えられず、
偏頭痛がひどいという仮病に頼り、
カビ臭い布団をかぶって耳をふさいでいると、
目を閉じた記憶もないまま寝てしまっていました。
たぶん何度目かのチャイムのあと、
無音の保健室を出ました。

西日が窓ガラスに当たってすこしだけ角度がかわる
渡り廊下の端で
雑巾を手にしたわたしが立ち尽くしている
この階にはだれもいない
ひたひたと水滴が落
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