演奏会が始まる/坂本瞳子
 
足を踏み入れる
危険の領域ではないけれど
板張りの床に擦れる靴の裏側が
心地良い音を奏で
高級なサロンであると悟らせる

?い天井にはシャンデリアが輝き
温かな光を放つ
厳選された招待客は
黒衣に身を包み
洗練された微笑を浮かべて集う

豪奢な白い鍵盤が端正に輝き
琴線から音が放たれるのを待機している

息を飲んで皆が待つ中
現れし演奏者の
長く細い指から奏でられる
清らかなる最初の一音で
至福の時間が始まる


〜アシンクに寄せて〜
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