千の色に染まる水/まーつん
 
散らかった部屋を掃除したら
埃を被ったガラクタの下から
顔を出す思い出が一杯

浜辺に打ち上げられた
ペットボトルの溺死体みたいに
塩辛い記憶を吐き出した

僕は年老いた若者
時の目を掠め忍び行く老人

自慢じゃないけど
この狭い部屋の中で
広い世界を旅してきた

ある日、窓の向こうを眺めていたら
雲の上に立つ神様が見えた

白いひげの老人のようにも
無邪気に笑う少女のようにも見えた

神様は
始まりの光をその指先で弾いた
光の破片は無数の色になって
薄暗くて汚いこの世界の
あちこちに散らばった

千の色は覚えきれない
その総てを、美しいとは
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