1・17/大覚アキラ
何か目的があったわけじゃない。
ふいに何かに突き動かされたみたいに、
閉まりかけのドアをすり抜けるようにして電車を降りた。
大学時代にバイトしていた小さなレンタルCD屋があった街だ。
ホームに漂う空気は、あの頃と同じ匂いがしていた。
改札を抜けると、すぐ目の前に商店街がある。
薄暗くて埃っぽかったアーケードは明るくすっきりと新調され、
あのレンタルCD屋があった場所には
携帯電話のショップができていた。
バイトの帰りによく立ち寄った居酒屋は
女子高生で賑わうドーナツショップになっていて、
揚げたてのコロッケがおいしかった肉屋は
消費者金融の店舗に様変わりしていた。
そ
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