月への道/秋葉竹
寒さに震える 冬の夜は
目的もなく 歩き疲れるまで
歩くことにしている。
その間 私の息は 清潔ではない、気がする
清涼にするため、清涼飲料水を飲む。
真っ黒な 土の見えない 歩道を
立ち上がった 白い蛇と並び歩く。
その、濡れた蛇柄から跳びはねる
水滴や血の飛沫をよけるために
穏やかで鈍い眼を瞑る。
京の都に千年前から掛けられている
一本橋という名の橋の上に立ち止まり、
白い蛇は橋の下を覗き込む。
真っ暗で 水のない、枯れた河原から
真っ白な さらさらとした砂粒を
月の庭園へ、送り返すのを
そっと息を凝らして観ている。
長い舌を出し入れ
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