遠くで船がゆく/ふじりゅう
 

また、消えてゆく

船は既に 此処には無い






誰か 背を押す者がいる

胸を乾かすほどに潮風がわらう

コートにも、スーツにも

僕を慰める術を知らぬ。

父は言った、「正しくあれ」と

俺があの船に乗らずにいた事が

波打ち際の傍観者にさせたとしたら

このまま波の音の上

もう少し 煙を吹かせていよう


あの父に似た海の背に

もう少し もう少し 融けていよう
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