マンホール/ふじりゅう
―――
彼は一杯の幸せを大事そうに抱えて
走り回る少年だった。
おじさんはすぐに消えた。
ベットに浮かんだままで。
割れたビールビンひとつばかりに
瓶と重なった唯人が映った―
――――――
先程投げた
彼の小石がひっそりと
僕を見てくれていたことに
気づかなかった
――――――
女はハンカチを手渡した。
ハンカチは初めて女の手に
触れたかのように
無限大に柔らかいものであった。
人間とはこういうことなのか。
「
女は炎に似た笑顔であった。
女は眉毛を整えて
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