森/ふるる
 
森はたえず拡がり続けているのでした 私と兄は手に手を取ってその森を歩くの
でしたが出口を探すことはとうに諦めているのでした(二人の目は 暗い)鳥が
啼くと言ってはそちらへ 風が花の香りをと言ってはそちらへ 二人はほんとう
に川を流れるさくらんぼのように くるくると狂ってしまったように(少し楽し
い) あちらこちらをさまようのでした(足が鉛のよう) 兄はこんな緑したた
る美しい森のためなら死んでもよい(本気だった) などと言うので私は泣きま
した(ごめんよ) だって兄さんがいなくなってしまったら






いなくなってしまった兄さんの髪だけを手に私はたえず歩き続けているの
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