そのひとは/もっぷ
 
きれいなうそをつくひとでした
ぼくも苦手だと云い乍ら
わたしが飲めないシェリー酒を
こっそりひとりで飲むひとでした

きれいなうそをつくひとでした
ぼくの夢だと云い乍ら
わたしがせがんだ北国の
雪を一緒に見に行きました

彼のうそってきれいなうそで
だまされるのが好きでした

けれど
うそで生きているひとでなく
彼はわたしに求婚しました
うそでないことはすぐわかり
わたしは泣いて頷きました

チャペルは止して
神社も止して
ふたりで海に行きました
静かな秋の凪の日で
ピンクの桜花でけぶっていました


彼のうそってきれいなうそで
だまし続けてほしかった
最後のうそは風にことづて
死んだ とか


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