どらびだの駅/「ま」の字
 
  
いま どらびだの駅だ
むかし おなじ名まえのくにを紀行したが
もうずいぶん前だったので
ぼうぼうとした
かぜの中あたりで 周囲を見まわす
駅舎があるとは知らなかった
いや
とうの
昔に放棄されたものでも

おうい。

おうい いるかぁ。

だれも いないと知っている
おうい。
林檎のかたちの石
をなげるように よびかけるのだった
そもそもが
荒いみなみ風が 次々おしよせる
土地だった

ながく ちいさい草の穂が
思いおもいにゆれるなかを
ずいぶん荒れたなあ
と 歩きながら 呟く
海がちかい
とおもえば殺風景な海岸があらわれる この国

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