命の忘却/のらさんきち
 
鳩が、轢かれていた
先刻まで内臓であった、肉であった
暗い紅の塊を
透明な青空に晒して

恬淡として流れる時の何処か
羽ばたく命として「いた」それは
一瞬を境に
おぞましい塊としてそこに「あった」

ああ、何故だろう!
それが穢らわしく思われるのは
目を背けたくなるのは
命とは
そんなものなのか!

その物体は雄弁に死を語っていた
街行く人は、急ぎ足で通り過ぎていく
耳を塞ぐように
何も無かったかのように
そして僕も…



夕暮れ
あの物体は消失していた
何も無かったかのように
いつか僕の神経回路にそれは
初めから無かったモノとして
永遠に記録されるのだろう

そしていつか
僕も…
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