夢(一) 全文/沼谷香澄
 
いたのですね?どのように流されても生きている限り即ち、自分は「存在するもの」であり価値が生じる。生きててナンボ、というのは非常時も豊かなときも変わらない。
よくぞ生き抜いてくださったお父さん。}不可能な彼が真夏の雲に乗り周回遅れのわれを見おろす
しかし私はいまだに抑えつけられている。例えば。欲はいけない。嫉妬はいけない。というような日常の小さなことの積み重ねが自身を押さえつけていないとは言い切れない。
ということは押さえつけられない方向へ進めばいいのだ。日常の小さなことの積み重ね。遠くの父。微熱がゆっくりと引いていき、右手の親指が激しく震え始める。待ちなさい。早急にすべての解決を求めてはいけない。


初出:Tongue9号 2004年7月18日 原文縦書

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