水晶の人/ベンジャミン
 

虚無をまとって闇を隠せば
それは限りなく深い透明のように見える

あなたは
自分を見せることなく
優しさを浮かべた瞳で見つめる

僕は
その優しさの結晶に自分を映す
一つの優しさを共有するように
僕は自分に微笑んでしまう
あなたは
寂しそうに笑いながら
「嬉しい」と
呟く

あなたの虚無は存在する
それは集積した過去を包んでいる

他人の優しさなど
滑らかに受け流してしまえるような
かたくなにまるくうずくまる
あなた

あなたの
その悲しいまでに透明に見える虚無
でもそれがあなたを守っているのなら

僕は
その裏側を見ることなく
ただ
透明に色をのせて
せめて
あなたの本当を見たいと思うのです

たとえそれが僕にとって虚無であっても



   


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