たわしアーキタイプ/若原光彦
 
 惣菜売場に、大量のたわしが売られていた。欲しいぶんだけ各自で容器に取り、レジへ持っていくと、個数に応じた値段が求められる。それらはじゃがいもを茹で、潰し、丸め、ころもを着けて、油で揚げたものであって、それはたわしではない。たわしは食べ物ではない。あれはたわしではない。あれは、ではどうして、手書きポップにもレシートにもたわしと書かれていたのか。
 帰宅し、メモ用紙に、たわし、と書いてみた。平仮名で書き、その下に片仮名で書いた。さらにその下に、レシートにある印字を、図案を模写するように、きっかりと書き写してみた。それらを上から順に、声に出し読んでみる。たわし。たわし。たわし。なぜこれでたわしと読め
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