花火/宮木理人
スーパーマーケットの外で缶ビール片手に持ちながら
青いポロシャツのおじさんが今夜も小一時間
おじさんにしか見えないというブラックホールの話をしている
ぼくはその姿を一番おもしろい角度から眺める
おじさんの顔を、ぼくがおもしろがって見ているということをおじさんに悟られてはいけない
なにしろおじさんは真剣だから
夏が終わって秋の風が吹きはじめ
辺りには涼しい風が吹いている
その涼しさは何度も繰り返してきたはずなのに
全てを忘れたかのように新鮮だ
ぼくの目の前には、バレーボールほどの大きさの、ぬるぬるとしたイカに似た生き物が宙に浮いていて、その両端に生えたヒレのようにうね
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