'16 とある解夏/北井戸 あや子
 
聞いていたのは、どこか遠くで
伝わるだろうか、こんな遠くで
割いた 空気の内に
清らかな居場所があるという
だれも知れないそんな居場所が
帰らないのか、帰れないのか
解らないのは、当たり前だろ
夜のタイルを滑る明かりより弱く
嘔吐する弱い声
叫んでみても、どうやら迷子で
消え失せたくなる、日の真ん中で
君は知るだろ
君は見るだろ
手離してから、歩く先まで
行けるだろうか、近き遠くへ
通り雨に走った日
息切れて燐寸を擦りながら
ねえ、まるで淋しいレコードみたいだろ?
なんて吐いた
手を翳した少年の残香へ
遠く夏の気がふれる
ねえこんな晴れだと、ぼくは死んでるみたいだろ?
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