保育園の頃の記憶/宮木理人
 
宇宙どこにもない唯一の視点を獲得してしまっている。
みんなと一緒であることが確認のしようがないほどの色彩や感触
抱きしめることもキスをすることもできるようでできない実体が
記憶のなかだけで揺らめく





水平線を上下するカモメの群れは
父と行ったいつかの釣り場の漁港の風景で
今でも内側で陽を浴びている
幼いぼくはそこで魚を釣って
バケツのなかで泳いでいる姿を眺めていた
発電所の裏側のような場所で、工場地帯のような無機質な建物が背後にあった
両隣にも、違うファミリーが釣りを楽しんでいた

大人になってから地元へ帰った時
車を走らせその漁港を探したが、いくら探しても見つからず
父に聞いても全く覚えていないという


戻る   Point(3)