保育園の頃の記憶/宮木理人
 
しだすように動いた。

「大人になるにつれてお前はこのような何気ない景色を、何度も忘れそうになるだろう」
自分のなかから知らない大人の声が聞こえたような気がした。それはひとつの警告のようにぼくの体の内側に響いた。





お泊まり保育もした。
夕方の涼しい風に吹かれながら、皆で並んで夕飯の買い物に出かけた。
こうすけ君は、たまねぎを買うときに「一つ」とうまく発音できなくてお店のひとに「ひとちゅ…!ひとちゅ…!」と言っていた。
帰って来て先生の指導のもと、自分たちで包丁を使って具材を切ってでかい釜にぶちこんだ。
本当に大きな鍋だった。ぐつぐつと煮えたぎるカレーが出来上が
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