保育園の頃の記憶/宮木理人
 
縁側から見える風景は、タイヤの遊具とうさぎの小屋、小高い山と、その裏に生えているバナナの木。
住宅街のなかで息づくその空間の真上にはいつでも空空空空空空空空空空空空空空空空が流れていた。
目に飛び込んでくる光景はどれもが無条件に新鮮なもので、それを見る眼球そのものもミニトマトのように瑞々しかったな。

その日はとにかく晴天だった。
自分はふと立ち止まって園内に一本だけ建つ電信柱を見上げた。
今思えば、そんなもの本当にあったかどうかも疑わしいが、
太陽の光が眩しく、黒いシルエットとなった電信柱が空と重なる景色を見たとき
涼しい風が一瞬吹いて、頭のなかを流れる血液が、新しい部屋を探しだ
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