泣けば泣くほどに/もっぷ
 
花野を二分するようにさやかな小川が流れている
書くべきでないこちらのその向こう岸がまばゆい

悪い夢を見た人たちが
今朝を待てずに捨てに来る小川
好まない好めない幾つかからは解放されて
枕とともに部屋へ戻ると その小川を忘れ去る
人の闇の流れ着く先のそこ、実は
向こう岸ではほんとうは
哀しみの雨の止むことがない
こちらはといえば
夢になれなかった現実が
いまも夜明けを待っている
それでも
小川が濁った日をわたしは得たことがない
と やがて綴じられる秋が


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