雨は沈黙の音を世界に放つ/坂本瞳子
 
右の肩を少しだけ上げて
顎を窓の方に傾けて
見える景色は空気の色が違う

雨の滴は線になって
薄い紫色を含み
アジサイを想い出させる

ひとしずく
音を響かせて
ほかのすべての音を消してしまう
世界があたかも止まってしまったかのように

ひとしれず
地面を打ちつけている
ただそれだけのことなのに
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