夜と爪/木立 悟
音の無い陽だまりの
小さな影をつまむ
紙と木と水の王国
やがて火へと向かう王国
失望の羽が一枚
ふたつにちぎれ 横たわり
夢遊病者の背の月
三時三十三分の月
痛みの波と魚の眠り
常に左の空腹を向き
星を砕く星の外套
水を失くした水音のなか
鐘と扉が交互につづき
夜の径に響いている
声は次々と雨に変わり
風を遠くへ押しやってゆく
火も葉も光も単位のように
数の後ろに並んでいる
雨粒の顔を
見ようともせずに
淵に沈み
暗がりをすくう手
爪にまぎれ込む見知らぬ星が
淡く淡くかがやいている
戻る 編 削 Point(3)