卒塔婆を背負いて山をゆく/渡辺八畳@祝儀敷
県道沿いの山は粘土質だ。
いつも湿っていて、
一歩ごとに靴底へべったりと張り付く。
私は墨染みた卒塔婆を背負っては、
暗き夜に忍び歩く。
夜露は私の身体をぬらす。
ぬれながら、泥で汚れながら、なおも忍び歩く。
木の葉の隙間をかいくぐって、
向こうの街から熱電球の明りが刺してくる。
トラックが轟音をうならせて県道を通過する。
鉄塊のようなその音がアスファルトに反響している。
卒塔婆は盗んできたものだ。
あまりにも古くて、朽ちつつある。
私に書かれている文字は読めなく、
まるで卒塔婆を這う無数の小さな蛇にしか見えない。
その卒塔婆を背負って私は山をゆく。
半分腐った
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