春のスケツチ三題/石村
 




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わすれてもらへるなんて
うらやましいことです

たれの目にもふれず
こころのうちに咲き
たれに憶えてもらふこともなく
たれにわすれられることもなく
時のはてにいたるまで
風にちひさくゆれつづける
この花々のうつくしさ
しづけさ と

くらべてみてください


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山あひの駅にはなつかしいひとたちがゐる。

ホームのベンチで涼しげに陽ざしを浴びながら
お弁当をひろげて
汽車がくるのをまつてゐる。

その路線は二十五年前に廃止されたと
どこかの誰かがきめたらしいが

この世がほろんだ頃に汽車はまた来るとみな知つてゐるので

たれもあはててはゐない。


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おろかな ひとの子

己がこころのうつくしさに
すこしもきづかない





(二〇一七年三月十九日)



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