水平線/寒雪
まだまだ
暑さが足元から
いなくなってくれない
晩夏の午後
彼女を乗せて
近所の海岸へ
浜辺に降りて
無邪気に波飛沫と
戯れる彼女を尻目に
広がる水平線を
瞳の奥に詰め込んでみる
水平線は
どこまでいっても
愚直なまでに
真っ直ぐで
何時まで経っても
何物とも交わることはない
潔癖なまでの平行
おそらく今
ぼくがタライの船で
無闇矢鱈と
沖へと漕ぎ出して
途中遭難してしまっても
どこまでも平行で
地球が丸いことを
ぼくの眼前で否定し続けるのだろう
ぼくが脳裏に描けるのは
四角い朴訥とした
風景画が精一杯
今のぼくには
目の前の水平線と
耳に馴染む彼女の嬌声
それだけがリアル
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