神無月/
忍野水香
神無月 湖畔の七竈は
たわわに赤い実をぶら下げ
紅葉が始まっている
見上げれば 艶やかな山法師
実は甘くて美味しいが
何故か 鳥はあまり好まず
足元を見やれば
ぴかぴかの山栗が
そこら中に転がっている
数多の命を育みながら
滔々と流るる水と
それを包む 豊かな草や木々よ
あと一月で
景色はすべて塗り変わる
霜月になれば
富士の水辺も錦の衣を纏い
有終の美の歌を奏でるだろう
常しえに 留まることなく
水は巡り
季節は巡り
人の命もまた、然り
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