サヨナライオン/やまうちあつし
わたしもそれなりに
大きな別れを経験したことがあるけれど
それらすべてに共通しているのは
ライオンがいた、ということだ
動物園が舞台であるわけでも
たとえ話をしているのでもない
大きな別れが迫っているとき
なぜかわたしの近辺には
たてがみ豊かなライオンが
うろついている
飛びかかりもせず
吠え立てもせず
ふらり、とそこにいる
精悍な表情と引き締まった体に
思わず目を留める
ところがそれは
わたしにしか見えないのか
周囲の人は気にする様子がな
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