呼吸/N哉
それは自然淘汰、群れを成していた僕たちが、気性の荒い一匹のおれに住みかを奪われ、そのおれは省みるに主人公などでは決してなかった人生、謙虚に生きなければならぬと道を譲り、 そのうち私になり、そもそも自我などあるから他人を意識する羽目になるのだと、やがて一人称すら使わなくなった。
呼吸
煙草と共に吐き出した煙にしかめる女性陣に、うっかり解き放った溜め息の重さに項垂れた友人に、息なんてしちゃあいけない、可能な限り、堪えなさい。
呼吸
おれはしかし、やはりおれでありたいと何処かで願っている。思い切り息を吐き出したいとイメージしている。ジェスチャアで何人が気付くかと、繰返してきた、選ばない、できるだけ選ばれるように、生きてきた。
呼吸
そこにここに本来という言葉で守られるおれのミイラや白骨があって、しかしそれはあるだけのもので、特に何かを成すわけでは、なかった。
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