『境界船アリス・ドライブ』/川村 透
 
君とアリス・ドライブの途中
蒼い森の入り口で白い車の息があがった。
僕は
車のボンネットを開けてしたたかに朝の蒸気を浴びる
ナビ・シートでは彼女のソウルが
コールタールの音をたてているんだろう

僕は森の瞳で
ブルー・フィルムの登場人物みたいにぎこちなく
彼女に笑いかけてみせる

フィトンチッド

何がいけなかったのか?
半身にせせらぎとフィトンチッド
半身にアスファルトのかげろふと排気ガス
森の空気が僕の輪郭をなぞっている
ウインクで彼女を森の中にご招待さしあげて
二人で木の根に腰掛けて肩を並べてみる

僕は森の瞳で
ブルー・フィルムの登場人物みたいにぎ
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