あらかじめなにかが窒息している/ホロウ・シカエルボク
ガラス管のなかに生身をむりやりねじ込まれるみたいな感覚が長いこと続いていた、閉塞感なんて月並みな言葉で話しても良かったがいつだってそんなものに真実を語る力などない…そこら中をうろついてる、在りもののイデーにかしずいてる連中を見れば分かるだろ?可聴可音域のみに制限されたミュージック・ディスクみたいなものさ、言外のことはそこには内包されない―日付変更線まで半時間近くになったころ、通り過ぎる車のエンジン音ももうずいぶん少なくなった表通りで、言語化されない感情を叫んでいる男が居る、少年が宿った老人のようなその声は悲しいほど一時的だ…酩酊の果ての愚行なのか、それともあらかじめ愚かな魂を持って生まれてきたのか
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