『かのん、の、「入院」』/川村 透
 
が、みつからない
かのん、の「さびしい」は、どこにいるの?
ぼくはどうしたらいい?
かのん、の「さびしい」は、どこにいるの?
かのん、の「さびしい」が、ドウシテモ、みつからないんだ、おかあさんおかあさん
ベソをかきながら、ミミヲスマス、ト
アオイ、カゼ、ガ、シタタッテ、シミテキタ
かのん、の「さびしい」が、ココにも、いる
かのん、の「さびしい」が、ココにいる
かのん、の「さびしい」は、ボクの中にいる、
ミ・ツ・ケ・タ。
まってて!
もうすこしでぼくのゆびがとどくよ

「!」

「暗すぎる、くらすぎる、クラスギル!」

かのん、の呪文がくらやみに満ちる、と
パチン、って音がして、部屋に蛍光灯の朝が来た
「おかあさんよ」って
あなたが、かのん、の、ほほをだきしめてくれたよ

僕たちは、かのん、を、そっと毛布で守りながら
いつもより、もっと、もっとおごそかに
入院の支度を始めた。


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