どっちかっていえば悪いのは僕だった、君が慌てていってしまう前までは/竜門勇気
ひきの匂いがする
濡れたタオルが毛布を濡らす
会えたら言いたいことあったんだ
留守番してた犬に託された伝言を聞いた
あれは7月の終わりだった
5月10日、不在訪問がありました。メッセージは1件。
わんわん、お前はのろまさ
まるで私が死んでるのを
嘘だとでも思ってるみたい
ベンチで君の指を解きながら
月が昇るのを見ていた
ぬるい排気ガスの塊はまだそこらをうろついてる
出会うこともあるだろうし
そうじゃないこともあるだろう
解いた指の間に自分の指を通しながら
しらない家に明かりがつくのを待っていた
出会うこともあるだろうし
そうじゃないこともあるんだ
最後に着た服が一番のお気に入りなんだ
手のひら同士をぴったりとくっつけて
しらない家に明かりがつくのを待っている
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