紙飛行機を飛ばしたいね、できるだけ優しく/宮木理人
束ねられた数万本のなかから、何かの拍子に抜け落ちた一本の髪の毛は、しばらく空中をふわふわと漂ったあと、地面に着地して、そのまま眠るように日が暮れて、夜になると新宿の地下から出動する作業員たちが持つ掃除機のような専門のマシンに吸い取られる。黄色に塗装されたそのノズルの先端が、交差点でUターンをしたタクシーのライトに反射して一瞬キラリと光った。
成熟しすぎた街は人々を統制するような迷路を張り巡らせ、誰とも心を交わさなくともそれとなく死なないで生きていける平和な残酷さと、それに対して次第に何も思わなくなる鈍感さを携えながら、そこで暮らすそれぞれの人間のどうしようもない感情を火薬と一緒に詰め込み
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