夜明けの部屋と国道/宮木理人
夜明けが近い窓の奥から
規則的に響き渡る金属音
その音に感化させられるように
横たわる体の関節の隙間から
浮かびあがった
記憶の断片たちが
顔を見合わせる
記憶の端に火が灯り
ぼんやりと照らされた暗部は
未経験の過去の映像でした
冷蔵庫の低音
暗闇の沈殿
電子レンジと炊飯器が
互いに会話をするように
デジタル表記の液晶を
点滅させています
まだ誰も車を走らせていない
夜明けの国道では
亡霊のようなバイクの集団が
無音で走り抜けていて
信号無視をした瞬間
ひとり残らず
線香花火のように消えてしまった
その映像が何処にも記録されていないことをいいことに
アスファルトは夜の冷たさを忘れて、
陽を浴びて、温かくなる
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