石/寒雪
 

その石を
自分の瞳に映らないよう
考えられる限り
遠くへ遠くへと
力一杯投げ捨てた
川の流れを
少しだけ妨げて
間の抜けた音と共に
石はまた
川の中に帰った
なんだかすっきりして
さっきまで
石があった手のひらを
見てみると
いつの間にかはわからないけど
小傷が一筋
それに気付くと同時に
湧き上がる痒みにも似た痛み
一瞬だけ僕の気持ちをかき乱した
その小傷が
なんだか嬉しくて
飽きることなく見つめている
ぼくの目の前を
川の流れはやっぱり
せわしなく通り過ぎて行った
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