やさしい/秋葉竹
 
たしの歌なんて聴く客なんていないのに
その野良猫のろうろうと押し出す
月に届かんばかりに絶望を噛みころす歌声には
酒場で寝ている酔っ払いたちも直立不動となり
赤ら顔をさらに真っ赤に染めて拍手喝采する

あなたはやわらかくピアノを弾き続ける ほらね

あたしのために作ってくれたむかしの歌を

毎夜、もうピアノやめなくちゃな
と聞き逃すほどのかすかなため息まじりに
少し 照れたように 小さく微笑みながらーーー

その やさしい嘘と微笑みの意味が
おさなすぎた
(っていっても二十代もなかばでしたが)
あたしにはわからず
この世で一番あたたかいお店で
普通に歌
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