森/秋葉竹
 



星は流れず、静寂の中
とても悲しい それでいてどこか朗らかな笑い声に
森の怖がりな小動物たちはいっせいに起き出し
声のする方角を凝っと視る

そして眼をそらす
かすかな 消え入るような笑い声のことを
なにも聴こえなかった振りをして



(恥ずかしそうな、人よりやさしい花瓶がその時
立ち続ける恐怖に耐えかねて 粉々に割れてしまう)



その音はすべての楽天家たちの耳に
荒々しくねじ込まれることとなる
だれひとり直視できずとも
聴かずにいる都合のいい選択はない

それは、悲鳴だったのだ

日々の暮らしに痛々しく追われるあなたの胸を
きっと貫く雨上がりの獣たちの匂いさえ
なかったことにする 時を止めちまう
こころを止めちまう 光を止めちまう
それはやはり、悲鳴だったのだ

聴くものすべて 神様に祈らせるほどの 残酷なーーー

戻る   Point(1)